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双極性障害のご家族をやむなく入院させたい場合に考えるべきこと

双極性障害のご家族をやむなく入院させたい場合に考えるべきこと

「躁状態」と「うつ状態」が絡み合い、どちらが本当の自分かわからなくなる双極性障害の方がご家族にいる場合、入院によって集中的に治療を受けてもらいたいと悩みを抱える方は少なくありません。

しかし、双極性障害は患者様ご自身が病気であるという自覚があっても症状の変化の度合いに気づきにくく、入院を拒まれるケースは多いです。

そこで本記事では、双極性障害を患っている方が入院するときの判断基準、入院の種類や手続きについて詳しくご紹介します。

あわせて、双極性障害によって入院される患者様のご家族がサポートできることについてもご紹介するので、入院をすることで症状の改善を目指してほしいと願っている方は、参考にしていただければ幸いです。

双極性障害での一般的な入院の判断基準

精神疾患のある患者様が入院をする理由はさまざまですが、なかでも双極性障害の患者様が入院するときの一般的な判断基準をご紹介します。

自傷や他害の危険性がある場合

躁状態になっている場合、衝動に任せた行動が増えたり、些細なことで怒ったりする患者様は少なくありません。
一方で、うつ状態になると自己否定の感情が高まり、悪化すると希死念慮を抱く方もいらっしゃいます。

そのため、患者様ご自身に対する自傷行為や周囲の方へ危害を加える可能性があると診断されると、入院が必要と判断されます。

食事や睡眠が著しく取れないなど日常生活が維持できない場合

躁状態・うつ状態いずれの場合も、睡眠や食生活に悪影響を及ぼすことがあります。

日常生活に支障をきたすほど症状が悪化している場合、入院をして安定した生活を取り戻せるように治療が行われます。

幻聴・幻覚・妄想などの精神症状が強い場合

双極性障害は、気分の浮き沈みの変化が大きくなると誇大妄想や被害妄想、幻聴や幻覚といった症状が現れることがあります。

このような場合、患者様ご自身だけでなく周囲の方も精神的な負担が大きくなるため、入院が必要と判断されるケースは少なくありません。

外来治療や自宅療養で症状の改善が見込めない場合

外来治療や自宅療養の場合、患者様が指示通りの服薬や療養を行わないことで、症状がなかなか改善しないといった悩みを抱えるご家族の方は多いです。

このような理由によって長い期間を経ても改善が見込めない場合、規則正しい生活・服薬をするために入院を促されることがあります。

家族や周囲のサポートが得られず本人の安全や健康が守れない場合

ご家族や友人が近くにいないことで患者様ご本人が社会から孤立している場合、周囲からのサポートが得られず安全の確保や健康維持ができず、双極性障害以外の疾患やケガをするといったリスクが高いです。

このような場合、常に人の目が届く入院という手段が選ばれることがあります。

双極性障害による入院の種類と手続き

双極性障害に限らず、精神疾患を患っている方が入院する場合の入院形態は、以下のようなものが挙げられます。

入院形態概要家族の同意
任意入院本人の同意で入院。
退院も本人の意思で可能。
不要
医療保護入院本人が入院を拒否する場合など、家族等の同意と精神保健指定医の判断で入院させる。必要
措置入院自傷・他害の恐れが強い場合、行政(都道府県知事)の指示で入院させる。不要
応急入院緊急時、家族等と連絡が取れない場合に短期間入院する。原則不要

実際に入院するとなった場合、以下のような入院手続きをすることが一般的です。

  • 医師が入院の必要性を認めた場合、入院の形態ごとに入院手続きが進められます※1
  • 患者様ご自身が入院を拒否する場合でも、「医療保護入院」医師とご家族の判断であれば入院させることが可能です。
  • 入院先へ到着後は入院前の診察や事前説明が行われ、病棟へ向かいます。

※1:通院している病院以外へ入院される場合は、主治医の診断書や紹介状が必要な場合があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

双極性障害での入院に際してご家族が考えるべきこと

双極性障害の患者様が入院される場合、医師や看護師だけでなくご家族のサポートも重要です。

搬送手段の検討

患者様ご自身の決断で入院が決まった場合は、入院先への移動は自家用車や公共交通機関、タクシーなどさまざまな選択肢があるでしょう。

しかし、双極性障害に限らず精神疾患は考えが変わりやすくなることがあり、最初は入院に同意しても、直前になって拒否したり、最悪の場合は暴れてしまったりするケースが少なくありません。

そのような可能性を考慮し、民間救急車を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

精神疾患に知見の深いスタッフがいる民間救急車へ依頼することで、拒否する患者様を言葉で説得し、入院を促すことができるでしょう。

入院中・退院後のサポート

無事に患者様が入院したら、定期的に連絡を取ることも大切です。

患者様によっては、入院という措置が「自分は拒否されている」と感じてしまうことがあります。定期的に連絡を取ることで「居場所はちゃんとある」ということを伝えることで、患者様も安心することができます。

その結果、退院後も疎外感を感じることなく日常生活へ戻ることができるでしょう。

経済的・生活上の配慮

病院への入院は、治療にかかる費用だけでなく差額ベッド代や食事代など、さまざまな費用がかかります。
また、無事退院できてもすぐに仕事へ復帰できるとは限りません。

このような理由から、ご家族による経済支援や生活のサポートが必要になるケースは多いです。

しかし、それらの全てを賄うためには限界があり、やりすぎてしまうとご自身の生活が不安定になる可能性があります。

上記のような課題を解決するために、公的機関によってさまざまな支援制度が用意されているので、一度確認してみるとよいでしょう。

双極性障害での入院に際して受けられる可能性のある社会的支援

双極性障害を患った方が入院される場合、公的な支援支援制度を活用することで、患者様だけでなくご家族の負担も減らせる場合があります。

全ての患者様が該当するとは限りませんが、負担を減らすための方法として参考にしてみてはいかがでしょうか。

障害年金

双極性障害によって長期間働けなくなったり、日常生活において著しく制限があったりする場合は、障害基礎年金(自営業・主婦など)や障害厚生年金(会社員など)の受給対象となる場合があります。

等級は1級から3級※1まであり、医師による診断書や病歴・就労状況申立書を年金事務所へ提出することで申請・判定が行われます。

患者様ご自身で作成する書類もありますが、社会保険労務士や医療機関のソーシャルワーカーへ相談することも可能です。

※1:3級は障害厚生年金のみとなります。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保険福祉手帳は、障害の状態に応じて1級から3級に区分され、申請は市区町村の障害福祉課で行います。

認定された等級に応じて公共交通機関の運賃割引、所得税や住民税などの税金の控除、携帯電話会社の割引サービスなどがあります※2

※2:携帯電話料金の割引など、民間企業から受けられるサービスは会社ごとに異なるので、事前の確認が必要です。

自立支援医療(精神通院医療)制度

精神疾患で継続して治療を続けている患者様の医療費自己負担割合を、原則として1割負担※3に軽減する制度です。
対象となるのは継続的に精神科の通院が必要と認められた方で、所得に応じた上限額も設けられています。

申請には医師の診断書が必要となり、市区町村の福祉担当窓口で手続きを行います。

※3:通院する医療機関や処方薬を受け取る調剤薬局の登録が必要です。

生活保護・障害者加算

病気などで働くことが困難になったり、高齢や障害によって生活か困窮してしまった方の生命維持を目的として、生活保護という制度があります。

生活保護で支給される金額は、精神障害者保険福祉手帳を持っていたり障害者年金(1級・2級)を受け取っている方の場合は障害者加算が基準額に上乗せされます。

障害者加算は手帳や年金がなくても認められるケースがあるので、自治体へ相談するときに確認するとよいでしょう。

高額療養費制度

1ヶ月の医療費の上限は、所得や年齢に応じて決められており、上限を超えた場合は申請をすることで払い戻しを受けることができます。

特に、入院のように事前に高額な費用がかかることがわかっている場合は、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、毎月の支払いが限度額以内に抑えることができるのでおすすめです。

就労支援

無事に退院し、患者様ご自身が社会復帰を目指したいと意欲を出してくれた場合、就労支援(A型・B型)や就労移行支援などの制度を活用することで意思を尊重するサポートができるでしょう。

精神疾患のある方の場合、ご自身で柔軟なサポートをしてもらえる職場を探すことは難しいことが多いので、支援サービスは強い味方となるでしょう。

まとめ

双極性障害は、患者様ご自身だけでなく、ご家族や周りの方々にも負担がかかります。
その結果として、「入院して症状を改善して欲しい」「入院したら私たちの負担も少しは減るのかな」と考える方は多いです。

しかし、双極性障害は患者様ご自身が症状の変化に気づかないケースもあり、そもそも入院という言葉を拒絶する方もいらっしゃいます。

上記のようなお悩みをお持ちの方は、まずは「よつば民救」へご相談ください。

よつば民救は、これまで患者様を一生懸命支えてきたご家族様の不安に寄り添い、対話によって患者様ご自身が「病院へ行こう」と思えるようなサポートをさせていただきます。

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