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強制入院とは?任意入院との違いをわかりやすく解説

強制入院とは?任意入院との違いをわかりやすく解説

精神疾患や認知症を患っている方が入院する方法の一つに「強制入院」と呼ばれる入院形態があります。

「強制」という単語のせいで不安を感じる方は多いですが、強制入院は症状が悪化している患者様を助けるために必要な制度です。

そこで本記事では強制入院の定義や種類、強制入院が必要とされたときにご家族の皆様に知っておいていただきたいことを詳しく解説します。

病気に苦しむ大切な方を守るための手段の一つとして参考にしていただければ幸いです。

強制入院とは?

強制入院と任意入院(一般的な入院)との大きな違いは、患者様ご本人の同意の有無です。

通常、任意入院は医師の説明を基に患者様の同意によって入院が決まり、希望があれば話し合いを重ねたうえで退院も可能です。

一方で、強制入院の場合は患者様のご家族や医師、自治体の判断によってご本人の同意なく入院させることができます。

強制入院の種類

強制入院には「措置入院」や「医療保護入院」など複数の入院形態があります。

各入院形態の概要や特徴を解説します。

措置入院

措置入院は、精神障害が原因で自傷や他害(他の人に危害を加える)の恐れがあると判断されたときに対象となる入院形態です。

患者様ご本人、またご家族からの同意は不要で、2名以上の精神保健指定医の診察で「入院が必要」と意見が一致した場合に、都道府県知事の権限で強制的な入院が認められます。

また、社会的に重大な危険を犯した場合に限りますが、行政の判断で入院させることも可能です。

医療保護入院

医療保護入院は、ご本人が入院の必要性があると適切な判断ができない場合に、精神保健指定医が医療と保護を目的とした入院が必要があると判断することで適用されます。

措置入院との大きな違いとして、患者様の同意は必要ありませんがご家族からの同意は必要※1となります。

※1:ご家族がいらっしゃらない患者様の場合は市区町村長の同意が必要

その他

措置入院、そして医療保護入院以外にも、2つの入院形態があります。

  • 応急入院:
    緊急に入院が必要であるにも関わらず家族からの同意が得られない場合、精神保健医の診察で最大72時間の入院が可能。
  • 緊急措置入院:
    措置入院の条件を満たし、かつ緊急に入院が必要とされる場合、精神保健医1名の診察で最大72時間の入院が可能。

各入院形態の違いは以下のとおりです。

入院形態主な要件同意者入院期間の制限
措置入院指定医2名の診察+自傷他害の恐れ不要制限なし
医療保護入院指定医1名の診察+家族等の同意家族等/市町村長制限なし
応急入院指定医1名の診察+緊急性不要72時間以内
緊急措置入院指定医1名の診察+自傷他害の恐れ不要72時間以内

このように、強制入院は患者様の症状や置かれている環境などによって、4つの入院形態のなかから適切なものが選ばれます。

強制入院についてご家族が知っておきたいこと

大切なご家族が強制入院となったとき、ご本人はもちろん、ご家族の皆様も不安になってしまうケースは少なくありません。

そこで、万が一「強制入院です」と診断されたときに少しでもご安心いただけるよう、ご家族に知っておいていただきたい点をご紹介します。

入院の手続きと要件を理解すること

まず、強制入院となった時の手続きと適用される要件をしっかり理解しておきましょう。

  • 医療保護入院の場合、家族等(配偶者、親権者、扶養義務者、後見人など)の同意が必要です。
    ご本人が治療を拒否していても、指定医の診断と家族等の同意があれば入院が可能です。
  • 措置入院は、本人や家族の意思に関わらず、都道府県知事の権限で行われます。
    自傷や他害の恐れがある場合は、2名以上の精神保健指定医の診察が必要です。

こちらの記事でも強制入院の条件を詳しくご紹介しているので、ぜひご覧ください。

関連記事:精神科に強制入院となる条件について詳しく解説

入院費用の負担について

入院する場合、入院中の治療費や食費、差額ベッド代などが必要となります。

  • 精神科入院には月額5~10万円程度の費用がかかる場合がありますが、公的支援制度(自立支援医療など)を活用することで負担を軽減できるので、事前に調べておくと万が一のときも安心です。
    手続きが複雑な場合は、精神保健福祉士など専門職に相談しましょう。

患者側の知る権利と医師の説明義務

強制入院とはいえ、法律によって患者様の尊厳を守るため医師には説明義務があります。

  • 強制入院の場合、入院理由や権利について十分な説明(告知義務)を受けることが法律で定められています。
    ご家族も内容をきちんと確認し、不明な点は遠慮なく医療機関に質問しましょう。

退院や治療方針の決定権は基本的に医師にある

強制入院の場合、任意入院とは異なり退院や治療方針の決定権は医師にあるため、患者様が「退院したい!」と伝えても、医師が許可しない限り認められることは少ないです。

そのため、まずはご家族が医師から十分な説明を受け、定期的に患者様の状態を確認してあげましょう。

入院期間中も気にかけてあげることで患者様も「一人じゃない」と感じ、退院後の生活もしやすくなるでしょう。

強制入院で行われる治療内容

強制入院の期間中に行われる主な治療内容をご紹介します。

休養・生活リズムの改善

「強制」という単語があっても、治療の目的は他の入院と同様に「患者様の心と体の安定や回復を目指す」ことです。

しっかり心と体を休め、規則正しい生活とバランスの取れた食事による改善を目指します。

薬物療法

精神障害は、同じ病名であっても症状は患者様ごとに違うため、薬の種類や用量も異なります。

入院期間中は薬の効果や副作用を確認しながら調整し、患者様に適した薬物治療が行われます。

精神療法・心理社会的支援

心の病気は、患者様の症状を理解し、根本的な問題を解決することが大切です。

そのため、精神療法によって患者様がご自身の感情や思考、行動パターンなどを把握する手助けをし、退院後のストレスや感情変化に対処するための方法を身につけていただきます。

また、退院後も自分らしく希望を抱いて生活できるように、患者様だけでなくご家族に向けた心理社会的支援と呼ばれるサポートを行う病院もあります。

リハビリテーション

精神障害の場合、患者様ご自身で身の回りのことができなくなるケースは少なくありません。

患者様の状況に応じて、日常生活に必要な動作のリハビリが行われることもあります。

まとめ

強制入院は、単語だけ聞くと非常に厳しいものだと思われがちですが、患者様はもちろん、ご家族の皆様や周りの方々を守るために必要な入院です。

しかし、患者様ご本人の同意を必要としないため、入院を拒否して病院へ向かわないケースは少なくありません。

このようなときは、私たち「よつば民救」にご相談ください。

看護師は保健師、精神領域の修士号を有するスタッフがご家族様のお悩みに寄り添い、適切な対応をさせていただきます。

また、患者様の尊厳を守るため、可能な限り対話を通じた穏やかな入院先までの移動をご提供いたします。

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